全貌 日本庭園

象徴庭園から抽象枯山水へ

自然を生かし、自然を超える。

造形がきわたつ
日本庭園100選掲載

中田勝康 著・写真
山、川を借景とした静謐な庭。見た瞬間に見入ってします不思議な景色だ。その理由は庭園背後の風景の美しさと、人口造形の好対照によるのであろう。
齋藤は後述のような心構えで作庭しているが、その心情が表れている。「施主の人生観に沿うために、作庭現場に近いところに宿泊し、施主と身近に生活して、朝霧に花を愛でている瞬間とか、自然に対する感受性とかを知ろうとする。そのため造園を着工してもすぐに石組をするのではなく、庭木の移植とかを行い、施主の感性の資料を可能な限り集め、相当集まった段階で、材料を探し始める。材料を選定する瞬間が、施主と感性を同じくする瞬間である。材料の選定は施主の感性に照合しつつ最大限の努力を払って選定する」
吉野川の雄大な眺めを借景にしている。その吉野川に鶴と亀が泳ぎ、宝船が蓬莱山に向かう鶴亀蓬莱(仙人が住んでいる世界)という日本庭園の伝統的な主題を構成している。
 右側に土壁が見えるが、本寺院は川沿いに壁があり、当初そのまま庭を作った。5~6年後、ご住職の英断で中央の壁を撤去し、借景の効果がより増した。

石組は亀や鶴を象徴しているのだろうが、そのよな詮索を拒むほど抽象化した造形である